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2010年 02月 22日
新井素子の7年ぶりの長編小説。帯の文句は「あなたは あたしの知ってる あなたじゃないよね? 人格が変容する恐怖。自分が判らなくなってしまう不安…。(表)」 「なんだか変! 大好きな和(やまと)おばさんは、愛娘を亡くして大きなショックを受けているはず、だからあたしが力づけなきゃ。でも。それにしても。―なにかがおかしい。澪湖(みおこ)は、その謎を探り始める。失われた記憶と、関係の中で醸成され増幅させる呪詛……著者ならではの軽妙な文体でつづる濃密な物語(裏)」 えっと…ここまでを書いて,実はこの1週間ずっと考えていた。ついでに,本書自体も,3回は読み返した。ここのところ,更新が短くなり,文体が妙に崩れてたのはこのせいでもある。新井素子の文章って,やたらと感染力が強く―正味の話,リズムから語句の選択まで,すべてにおいて支配されてしまうので―,できるだけ読んでから時間を置いて更新していたのだ(わはは。今読み返すと,2月16日の日記なんか払拭しきれてないぞ)。 これって…この本って…果たして,小説なのか? 新井素子は,この本を本当に面白いと思って書いたんだろうか。そして,出版社は,ホントにこれが売れると思って出版したんだろうか。そして,何より,あとがきにクレジットされている編集者の北村さんは……7年間,これを待っていたのだろうか。 ☆ というのは。この本,形式的におかしいのだ。形式的―いや,違うな。小説のお作法的に,普通はやらない方法をとっている。 この本は,大介(だいすけ),陽湖(ようこ),和(やまと),そして澪湖(みおこ)の4人の視点から一つの事件を描いている小説・・って、それだけでおかしいだろっ! 一人称で視点が変わるなんて…それも4つの視点が必要だなんて…おまけに,登場人物はほぼそれだけ。あと一人,いわゆる名探偵(澪湖曰く「最終兵器」)である木崎靖という人物が出てくるが,これは「謎解き」役であってそれ以上のものではない。 今の文を読んで,変だと思わなかった? そう、「謎とき役であってそれ以上のものではない」ってシャオは書いた。でも…そもそも。こーゆーお話って,謎解き役が主役じゃないのか? 主役のスタンスに立つのは澪湖なんだけど,謎を解くべき澪湖,徹頭徹尾何もしてない。ただ木崎に連絡を取って基本ヒスってるだけ。悪いけど,これほど無能な主人公,みたことない。 そして,和も…その,なんというか,彼女は「謎解きをされる側」なのだ。なのに彼女の一人称の文章が入るってのは…あり,なのか? そもそも,これを和の側から書いちゃうと…なんというか,すっげぇ違和感。常識で考えて,推理小説で犯人のモノローグが延々続くようなミステリってあると思うか? それに…ああ,陽湖の存在! いや,作家が登場人物にすべて意味づけをしろとは言わない。言わないけど…この話に,コイツ,必要か? 必要あるとして…あそこまでの分量を割いて,彼女のモノローグが必要あるか? 大介も同じだ。ぶっちゃけ,大介と陽湖は夫婦で,澪湖はその娘って設定なんだから…それこそ,澪湖に代弁させればいいだけなんじゃないか? おまけに,これはもう新井素子である以上どうしようもないんだけど…全員の区別がつかない。まだ大介は,それでも男言葉になっているから判るけど…21才の澪湖,おそらくは30代後半の和,そして40代前半の陽湖…えええいっ! みんな口調が同じなんじゃい! ランダムにページを開けて,そこに女性言葉で羅列があった場合…文体で個人を見分けられる自信が,シャオには,ない。 仕草や口調も少し変だ。シャオが年齢的にもっとも近いのは和なんだけど,実際の30代後半はこんな口調やこんな仕草はしないと思う。小首をかしげてきょとんとする…うん、実際にしてる30代後半の人間はかなり気持ち悪そうだ。それから,新井素子,オタクというものを,なんか誤解してないか。それも…とびっきりの美化。今時の20代前半であんな落ち着いたオタクなんて見たことないし,澪湖も,21歳とは思えない口調が続く。やたらと語尾を延ばすのは少しは意識したのかもしれないけど「なのよー」という語尾は…あの…そんな言葉はないというかなんというか…あと,二人称代名詞としての「お宅」ってのも,悪いけど,もう,完全に絶滅してる使い方だと思う。 4人分の一人称,それも3人は殆ど見分けがつかないまま話は進んでいき…そして迎えるエンディングは,決してハッピーエンドじゃない。それでいて,謎解き部分は思い切り力技。いや,あの,シャオはいいですよ? SF好きですから。一瞬で,謎解きはわかる。言葉が出てきたとき「そう来ましたか」と感嘆したといってもよい。だけど…だけど。これって…決して,万人が共有できないことは判ってる感触で―いや,シャオが誰よりもSFに詳しい,とまではさすがに言わない。けど,そもそも,世の中にはSFってのを全く知らない人がいるわけで…その人が読んだら,これ,詐欺だと思うんじゃないか。装丁その他もろもろで,SFですっっ!って全身で叫んでる本とはとても思えないし,実際,その謎解き以外に,SF的な要素は,ない。 と,色々と書き連ねてみたのだけど。 実のところ,これ,全て「美点」なのだ。うそだろーと思ったあなた,騙されたと思って読んでみてください。まとまりのない一人称,強引な謎解き。読んでて不必要なほど冗長な主人公たちのモノローグは、次の一言にパンフォーカスされる。 「狂気」 「なにか」が違うだけで,ちょっとずつ,でも確実に狂っていく世界。それは大規模な自然災害でもなく,ましてや悪意の侵略などではない,ほんのわずかな生活の中からのちょっとした綻び。そこに焦点を当てると,この話は,意外なほど恐ろしく…そして良作であることがわかる。 SFのレトリックなどどうでもよい,細かな一人称の違和感なんか後付だ。いや,この「狂気」を感じさせるには必要だといってもよい。読んでいて薄ら寒く,そしてどこか居心地の悪い,それでいて「悪意」の人間が一人もいないという,恐ろしく非現実的で現実的な世界。4人のモノローグは,まるで彫刻の浮き彫りのように,情景を直接的にではなく,ネガ的に浮かび上がらせる。こんなん書かせたら日本一だな新井素子。いやマジで。 ただ,シャオは思うのだ。 この「狂気」って…新井素子,計算して書いたのか? 編集者の北村さんは,それをわかって,この原稿に筆を入れなかったのか? そして,新潮社は,そこを踏まえて,「売れる」と判断して出版したのか? だから、この本は、出版されたこと自体、かなり(シャオにとって)謎だ。確かに新井素子と言えば一世を風靡した女性作家だけど…少なくとも、時代の最先端には、いない。前作「チグリスとユーフラテス」(これは文句なしに名作のSF)で賞を取ったのが1999年。そしてそれ以後、本自体大して書いてないじゃないかあ。いやそりゃ、ブラック・キャットを完結させたってのは、も、執念を通り越して妄執を感じるけど…でも、過去のネームバリューで出せるほど、本(しかもハードカバー)って軽くは、ない。 とはいえ。 人には薦めかねるけど,多分10年後の自分の本棚にもある本。 シャオにとって,この本は,そういう本なのだと…そんなふうに、思う。
by shaonanz
| 2010-02-22 21:12
| 本
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Comments(4)
Commented
by
Sin
at 2010-02-22 23:52
x
おや、小説のお約束事を逆に利用したトリックでもあるんですか・・・
ちょっと興味が出てきましたよ。
0
団体戦版「おしまいの日」?
いや新井素子さん御自身がお宅だからー。お宅な人を沢山ご存じだから貶めるなんてできないでしょー。ああああの蓮っ葉な物言いは真似できませぬ。
Commented
by
shaonanz at 2010-02-23 21:02
>Sinさん
いや、そーゆーわけでは。むしろトリックなどない。伏線あってのトリックなので…確かに伏線はあるけど、いくらなんでもそれであの結論は出ない。というわけで、1,500円の余裕があれば読んでみるのも吉かと。ただ、多分Sinさんは怒るような気がする…。
Commented
by
shaonanz at 2010-02-23 21:04
>もりかげさん
うーん、ニュアンスとしては近いですね。ただ、「おしまいの日」は主人公が徐々に狂っていった(主人公からしてみると「世界が狂った」)のだけれど、今回は、「世界は正常」「主人公も正常」なのに「全体としてみると狂気」という大変マガマガしい世界観です。いや、確かに新井素子にしか書けない世界だとは思います。それだけは確か。
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