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2008年 03月 17日
「卒業白書」 「にゃあん」 ……来たな。やりかけの問題集を閉じて。 「……何か用か?」 「なぁぁん。にゃぁぁご」 いつまでやってやがる。 「…猫語はわからん。日本語か英語で話してくれ」 「あれ? 英語苦手じゃなかったっけ??」 教室のドアの影から当の美幸が出てきた。ジュースを二つ持って。 「猫語はそれ以上に苦手だ」 「May the force be with you」 「誰がヨーダだ、誰が」 「言ってない言ってない。はい、これ差し入れ」 細い手で、コーラを差し出すと、美幸は俺の前の席に座り、自分のジュースのプリングを開けた。 「大変ね。卒業式の前の日まで勉強?」 「A日程の方の結果がわからん。万が一って事もある」 「国立だったっけ? 大変だね」 「そっちはどうよ? アメリカ留学、うまくいきそうなのか?」 「らっくちんらっくちん。まぁ、あと半年あるし」 「ふむ。俺もそっちに乗り換えるかな」 「止めないわよ。やってみたら? あたしが今、一日何時間英語の勉強してるか教えてあげよっか?」 「・・・・・スイマセン」 二人してけらけら笑う。もうじき夕暮れ……。 「ね」 美幸が考え考え言った。 「あ?」 「中学のときの卒業式も、確か二人でこうしてなかったっけ??」 「んー。確かそんな気がするな。卒業式の前日だろ?」 「そ。確かあたし、風邪で休んだんだよね」 「そうそう。んで、俺が卒業アルバム届けたら、いきなり『がっこ行く~』とか言い出したんだぜ。おばさんまで、南くんが一緒なら安心ね☆ とか言いやがって…」 「へ? そうだったっけ?」 「katzengedachtnis」 「あに?」 「独逸語。直訳すると猫の記憶力……日本語で言えばざる頭、脳みそ猫並、猫あたま」 「ほほぅ。いい度胸だね」 「まぁまぁ。マジにとるなよ。君のそういうところ好きなんだから」 一瞬の空白。きょとんとしていた美幸の頬がゆっくり緩む。…あ。 「ふむふむ。思い出しましたわ。 あんた、そういって中学のときあたし口説いたでしょ?」 げ。思い出しやがったか。 「あの時はごまかしたけどさー。結構悩んだんですぜ、ダンナ。それにしても、『ぼおっとしてるところも可愛くて好きだよ』つぅのはどうなのかな? ほめてんの? 喧嘩売ってんの?」 げげげげ。 「ちっ、そういうところだけよく覚えてるな」 ようようの俺の反撃を、美幸は胸をそらせて跳ね返した。 「ふふん。でも、いつの間にか南は彼女作っちゃうし、あたしはあたしで好きな人ができたんで忘れてたのよね」 「んで、そろって夏休みに振られて、か?」 「そうそう。あれは笑ったよねー。あたしが南に電話して『振られちったよー』って泣いたら、すごく憮然とした『俺もだ』って返答が帰ってきたんだよね」 「ありゃあギャグだったよな。悩んでたのが二人して馬鹿みたいになって。その次の日だろ? 二人で花火したのって」 「そう。確か、二人して残った花火をかき集めてね。『轟』とか『輝き』とかわけのわかんない花火まで持ち出して」 「どかーんって打ち上げるつもりだったのに、湿気ててさ」 「あたしが頭に来て蹴り倒したそのとたん、どかーん!って」 「あんときはおかしかったよなー」 「あたしは死ぬかと思ったわよ!」 しばらく二人でまた笑う。とても気持ちいい瞬間。ずっとこのままでいたいなーって…我ながらどうも女々しいな。 「ねぇ、卒業シーズンに決まってかかる曲って知ってる?」 「ん…? 尾崎の『卒業』か?」 「じゃなくて…明日香って歌手なんだけどね。『卒業白書』っていう曲なの」 「あ。最近よくラジオで流れるね」 卒業白書。確か。こんな感じの曲。 忘れてしまえば幸せですか うまく忘れる人が かしこい大人ということですか 君がくれた 優しさとぬくもりは 昨日の僕の 支えだったよ <『卒業白書/明日香』> 忘れてしまえば……か。 「でも、もう忘れないよね」 心を読んだかのように美幸が言う。 「あたしが恋したこと。失ったこと。南くんがいたこと。一緒に笑ったこと。花火したこと。この学校であたしが経験したことみんな。いくらあたしが猫あたまでも」 「思い出って言葉は好きじゃない」 「あたしもよ。 でもね、それでもって思うの。いくらお金を積まれてもこの思い出は消したくないの」 一息。 「この学校で、いいことばっかりあったなんて言わない。こんな学校辞めたいって思ったことなんか、いくらでもあるもの。息が詰まりそうだった。早くこんな檻から出たかった。だけど、それでもあたしは、ここで、この時代で、生きてたんだから。それを失いたくないの」 そう言って、自分の台詞に照れたように笑った。 ハイヒールって嫌いだよ。そう僕が言うと彼女は笑う。 サングラスって大嫌い。その彼女が言うと僕は笑う。 僕らは、そんなことにこだわって生きていたい。これからもずっと。 大人になんかなりたくない。物事を冷めた目で目で見ている大人なんか大嫌いだ。何もこだわることをしない大人なんて。 だけど、子供にはもう戻れない。 だったら。 時間を戻せないのなら、未来を変えるしかないじゃないか。 つまりはそれが 生きてるってことなのかもしれない。 きっと、そうさ。 <FIN>
by shaonanz
| 2008-03-17 21:59
| 再録
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Comments(2)
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