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2006年 09月 01日
以下の記事は2003年8月に書いた記事。都合上再録です。既読の人も多分忘れてるだろうから、斜め読みでも読むがヨロシ。 ******************************************* 「ハチミツとクローバー」というマンガがある。本日はそのレビューなど。 舞台は美大。東京都下にありつつ緑が豊富な美術大学に通学する,色々個性豊富な(謙譲表現)主人公たちが織り成す,ギャグと恋愛のドラマ,と言いたいのだが。正直に言って,こんなありきたりの言葉など無意味だ。 ストーリーの骨格は少女漫画。三角関係1つと,ドッグファイト恋愛(AはBが好き,BはCが好き,Cはもう誰も愛せない)1つで織りなす恋の行方を軸に,関係者がズンドコ節を歌ったり部屋の中を銀河鉄道999風に改造したりあげくの果てはグラミーCG賞を取ったりするという(既読の人間へ。それ全部森田じゃんとか言うな)ドタバタコメディ。 とはいえ,基本的には「ままならぬ恋」というのがテーマなので,登場人物はそれなりに泣いたりするし,結構ドロドロとしたり,プチストーカーみたいになったりしてる。してるんだが,作者はそれを全く暗く描いていない。泣きながら,かなわぬ思いを暖めながら,それでも登場人物たちは前に進んでいこうとする。そこで立ち止まったり,逃げだしたりはしない。言ってみれば,漫画の中の登場人物たちは,「常にベクトルが上を向いている」のだ。 自分の人生を振り返ったときに,確かに辛かったし悲しかったことがあったんだけども,妙に力強くかつ元気に生活していた時期というのは,誰もが覚えがあると思う。そんなことができるのは,多くは10代後半から20代前半の,自分が「何物であるかは判らないが,何者かにはなれると信じていた時期」の,特別な生活なのだろう。たとえ失恋しようがどうしようが,鼻で笑って,あるいは悲しげに微笑みながら,それでも「自分はこうなんだ」とただ純粋に主張できた時期。 この漫画は,そんな時期を見事に描いていると思う。 登場人物たちは,みな単純で,あけすけで,無遠慮だ。お互いがお互いを認めつつ,その中で領空侵犯を平気で行う。相手方の心に踏み込むかわりに,自分の心を閉ざしはしない。恋心を告げて,それを拒絶されたとしても,お互いに相手の人格を否定しないどころか,それでも関わろうとする。それは,まさに,ある時期だけに許された,最もうっとおしく,そして最も楽しく美しい友情や愛情の形だろう。 作者の羽海野チカは,その「若い」恋愛情景を描いていく。お互いが踏み込み,傷つき,それでもまた踏み込まずにはいられない(ヤマアラシのジレンマですな)彼らを,第三者視点でゆっくりと観察し,「若く」そして「無遠慮な」関係を,細い線で淡々と描く。それは,多分,「若い」恋愛ではあるのだけれど,「今現在若い」人間には,判りにくい描き方だと思う。 巻末のあとがき漫画で,基本的な登場人物とストーリーの説明があるんだが,30代前半の登場人物が「ええっ!俺,恋愛関係の中に入ってないのっ!」と叫ぶシーンがある。もちろん,ギャグとして彼はその台詞を叫んでいる訳だが,これは作者の確信犯だろう。ベクトルが上を向き,喪うことより得ることしか考えない彼ら大学生の中で,30代前半かつその大学の講師,という立場の彼は,大人としての自覚を持っている結果として,「お互いの心に踏み込む」という同一の恋愛や友情観を維持できないのだ。彼は,言わば作中での保護者であり,辛いことや悲しいことを提示しつつ,それを見守る(つまり踏み込まずに傍観する)という立場になるのだから。 そして,その「彼」の立場こそ,読者の立場と重複する。この漫画の読者層は,多分20代後半から30代前半だと思う。かつて,自分たちが通ってきた道を忘れ去ってはいないが,かといってもうそこには戻れない読者が,実は過半数を占めてるんじゃないだろうか。 シャオも同じだ。「あの頃」にはもう戻れないし,戻りたいともあまり思わない。 だが。 常にベクトルが上を向いていたあの頃,ワイシャツにネクタイに革靴ではなく,黒のスリムジーンズにTシャツにスニーカーが正装だったあの頃。 この漫画のページをめくる度に,シャオはあの頃を思い出すだろう。 もう戻れない,辛く,悲しく,そして見事に美しい時代。そんな時代を一生懸命生きている登場人物に,ちょっとした嫉妬すら感じながら。
by shaonanz
| 2006-09-01 00:11
| 再録
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