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2007年 02月 28日
基本的に評論の類は読まないんだけど(理由はまた後日にでも)、字幕業界の裏話的な要素を勉強するつもりで買ってみた、「字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ」。これがなかなかのスマッシュヒットで大変気分がよい。 要約すれば、「字幕を書いてるオバちゃんの日本語に関する説教集」。ここで言う説教とは「小言」という意味ではなく本来の意味で使用する。いやまさに、ここまで書ければまさに一種の宗教といえよう。つまり自分に合う合わないで結果が180度違うと言うこと。シャオの日本語感覚をここまで代弁してくださると大変助かる。今後はコレを引用すればよいからだ。さすが字幕屋、実に簡潔に、しかも上手くまとめておられる。 例えば、「私」という感じの部分について、こんな風にこだわっておられる。 常用漢字表に忠実な会社から仕事がきた場合、字幕屋が恐れおののく言葉に「わたし」がある。「わたし」を「私」とは書けないのだ。 「私」の正しい訓読みは「わたくし」であって「わたし」ではない。 しかし、日常会話で「わたくしは~」と言う人は今どきまれだろう。個人的な手紙やメールでも、「私は」と書けば、たいていの人が「わたしは」と読むはずだ。字幕も同様。むしろ。お上品な上流夫人が登場して、「私、お紅茶をいただくわ」などと言うときにこそ、「私」に「わたくし」とふりがなをふりたい。以前、修道院が舞台の映画を翻訳したときは、この縛りを逆手にとり、「シスターも神父も全員『わたくし』と言っているのです」と強弁して字幕原稿に「私」と書きまくった。たいへん気分がよかった。 とまずは講釈を一語り。ところが、この作者のいいところは、この講釈だけで終わらないところだ。次の段ではこう書かれる。 「わたし」という語は、字幕における最多使用語のひとつと見てまちがいない。「私」一文字ですむところを三倍の三文字にしろというのは、あんまりだ。泣きたくなる。 いいねえ、このてらいのなさと言うか小気味よさ。とにかく全編こーゆー感じで緩急取り混ぜて文章が進んでいく。アンタ、江戸っ子だねぇ、歯切れいいねえと言いたくなるが、実はこの方、我が雅なる平和都市県出身者なのだった。日本語にご興味のある方は是非一読を推奨する。
by shaonanz
| 2007-02-28 21:09
| 本
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