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2008年 11月 03日
「変わってないわね」 彼女は、その細い指でティースプーンをかき回した。アジアンテイストで統一された店内。彼女の前にはチャイ、そして僕の前にはロシアン・ティ。 「30代の男にそれは誉め言葉じゃないな」 苦笑交じりに、僕は流すように軽く言い、改めて彼女を見つめる。細面の顔にやや茶色がかかったロングヘアを後ろで一つにまとめている彼女は、「それもそうかもね」と受けた。 本当に偶然だった。高校時代の同級生と街の大通りですれ違った時、思わず声を上げてしまったのは、それが本当に偶然で・・そして丁度彼女のことを考えていたときだったからだ。 彼女とはクラスもクラブも違った。ただ図書館で、僕がプレヴェールの詩集を読んでいた時に声をかけられたのだ。 律動的な動作で、僕の前に座った「彼女」は、挨拶もなしに、「プレヴェール、好きなの?」と僕に問いかけた。 「いや。よく判らない」と僕は答えて、そして続けた。 「ただ、この詩だけはいいなと思って」 何千年あったって 語りつくせるものではない おまえがわたしを抱き わたしがおまえを抱いた あの永遠のほんの一瞬間は 冬の光がさしていたある朝のこと パリのモンスーリ公園で パリで 地上で 天体の一つ 地球の上で 「庭/北川冬彦 訳」 「好きよ」 「え?」 「わたしも。その詩。」 つまりはこんな風にして、僕は彼女に出会った。 彼女は、学年の中でも一風変わった子だった。女子高生、という集団でくくられることもなく、休み時間になると一人で文庫本を読んでいるだけらしい。らしい、というのは僕はそんな風景を見ていないからだ。 彼女にとっての僕は、さしずめ文学対象の雑談相手といったところだったろうか。休み時間、あるいは放課後。僕らは時々話しこんだ。詩のこと。小説のこと。彼女はヴェルレーヌを好み、僕は「モンテ・クリスト伯」を全集で読んでみることを勧めた。 卒業後、多くの人間が進学していく中、彼女の音信はふっつりと途絶えた。 「一瞬は永遠よね」 口元まで運んだロシアン・ティを止めて僕は頷く。まるで百万回も言った様に、僕はその言葉を口に出す。 「パリのモンスーリ公園で」 彼女は歌うように言う。 「地上で」 天体の一つ、地球で。 ああ。そうだ。 この瞬間も、永遠なのだ。 喫茶店のテーブルの上で、彼女に出会う直前に買ったプレヴェールの詩集が日の光に照らされていた。
by shaonanz
| 2008-11-03 20:47
| 弥生 薫
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Comments(2)
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